WHAT IS CYCLE LIVING LAB.?

一般社団法人サイクル・リビングラボは、自転車の活用を軸に新たな産業・文化を築き、地域の活性化に取り組む団体です。

活動の軸となるのは多様なステークホルダーと協働する「リビングラボ」アプローチ。

行政、企業、生活者の継続的な関係性を構築し、自転車、モビリティ、テクノロジーを軸としたさまざまなプロジェクトによって先進的な事業に取り組み、新たな価値の形成を通じて都市や地域の持続可能な発展を目指します。

新たなプロジェクトのスタート? 夕日ヶ浦/久美浜エリア(京丹後市)で地域の方々とワークショップを実施しました

 

2018年12月4日、私たち一般社団法人サイクル・リビングラボ(CLL)は、京丹後市で、地域にお住まいの事業者の方々とワークショップを実施しました。舞台は、北関西屈指の人気観光地として知られる夕日ヶ浦温泉〜久美浜エリア。地域の資源を発掘し、自転車を含む新たなプロジェクトの可能性を探ります。

地域の隠れた資源を洗い出す「白地図ワークショップ」

 

夕日ヶ浦温泉郷の「楽夕会」訪問からおよそ1か月が経過した12月初旬、CLLはメンバー5名全員で再び当地を訪問しました。目的は地元の事業者の方々とのワークショップ。地域の資源を洗い出し、自転車活用の可能性を探ります。

 

時刻はすっかり日も暮れた夜18時。会場の地域の集会所には、前回もお世話になった「楽夕会」のメンバーや、道の駅「久美浜SANKAIKAN」を管理する事業者の方など計5名の方に集まっていただきました。ここに、行政(京都府広域振興局、京丹後市)の職員が加わり、少人数のワークショップがスタートしました。

 

まずは会の趣旨を説明します。

 

・地域共通の問題は、春と秋の閑散期

・ゴールは、春と秋にも観光客が訪れたくなるようなコンテンツ・体験をつくること

・春と秋は、自転車を楽しむには最適なシーズン

・たとえば、地域の資源を活かした自転車での周遊体験ができないか

・このエリアは、自然環境を中心に、すでに魅力的なコンテンツがたくさんある

・さらに、現地の方々しか知り得ない情報を重ねていけば、ここにしかない魅力の詰まったルートもつくれるのではないか

 

以上のような課題と仮説設定から、今回行ったのは、白地図を用意するワークショップです。3チームに分かれ、「地域のおいしいもの」「地域でぜひ見てほしいもの」といった施設やスポットを、思いつくまま白地図に書き込んでもらいます。最終的に個々のコンテンツをつなぎ、各チームで考えたルート案を発表してもらいました。

「点」を「線」に、さらに「面」の拡がりへ

ワークショップは、実に和気あいあいとした雰囲気で進みました。ワークの勝手がわかってくると、地域の方々のひらめきはもう止まりません(笑)。それだけ粒ぞろいのコンテンツがこのエリアに眠っていることを再認識し、アイディエーションの段階からみなさんそれぞれの期待感も高まっていきました。

■チーム1:

 

チーム1は、2種類のルート案を発表しました。

 

1つは、久美浜湾(15km程度)を1周するルート。ほぼ水辺沿いの楕円形で、南部の市街地(久美浜エリア)や北部の温泉旅館街(小天橋エリア)、自然が豊かな西部エリアと、短いコースのなかで景観の変化を楽しむことができるそう。

 

もう1つは、久美浜湾南部を起点に、田んぼのなかの舗装路を駆け抜け、緩やかな峠道を越えて里山をくだるという快速コース。季節や時間帯によっては黄金色の田園風景が楽しめるほか、隠れた遺跡なども沿道には存在するのだそう。国道など大きな道を外れるように構成されているので、まさに地理を熟知した地元の方でなければ考えつかないルート案、と言えそうです。

チーム1が描いた久美浜湾南部の里山コース案

■チーム2:

チーム2は、久美浜湾1周や、久美浜と夕日ヶ浦温泉郷をつなぐ国道178号線を中心とするルート、さらには夕日ヶ浦温泉郷から東部に位置する網野地区までの1周ルートを発表しました。

 

市街地の久美浜エリアは飲食店が点在し、スイーツも充実。また、国道178号線沿いには地元産の果物の直売所も数多く立ち並ぶそうです。さらに、夕日ヶ浦温泉郷には日帰り温浴施設も用意されていて拠点としても使えそう、という意見が上がりました。

 

夕日ヶ浦温泉から網野地区をめぐるルートは、日本海沿いの険しい峠道をたどる上級者向けのハードなコース。ダイナミックな海岸線の景観や「鳴き砂」で有名な琴引浜といった自然環境、「静御前」生誕の地(静神社)、網野町伝統の食文化「バラ寿司」などの歴史や文化を感じられるスポットが揃っています。

■チーム3:

 

チーム3は、久美浜湾1周ルートと、国道178号線沿いルート、夕日ヶ浦温泉郷(浜詰海岸)から静神社付近の険しい峠道ルートを発表しました。

 

一見、他の2組同様のルートですが、ポイントは各エリアを特徴づけたこと。たとえば、国道178号線沿いは「スイートエリア」、日本海沿いの険しい峠道は「カルチャー&ハードエリア」といった具合です。

 

各チームの発表から、エリアごとの特徴が見えてきた

 

このようにワークショップでは、非常に多様なコンテンツとルートの可能性が示されました。企画設計面でCLLが意識したのは、コンテンツを「点⇒線⇒面」で拡げていくこと。点在するコンテンツ(点)をつなげることでルート案(線)となり、さらにはチーム3が発表したようにエリアとしての特徴が「面」として浮かんでくる。エリアごとの特徴が際立てば、観光客としては選択肢が増え訪問する楽しみが増えるでしょう。

 

地域としてはポテンシャルを再認識するとともに、共通の打ち手に取り組みやすくなるはずです。事実、ワークショップの結果、地域の方々からは「みんなの熱が冷めないうちに試走をしよう」という声が。

 

すでに12月ということで自転車シーズンからは外れているのですが、本日のワーク内容をもとに仮ルートをつくり、あらためて近日中に探索を行うことになりました。

京丹後市で拡がりはじめたサイクルラック

会の終盤には、サイクルラックの組み立てワークショップを京都府の事業の一環として行いました。専用に加工された木材を、ホームセンターなどで調達可能な金具で止めるだけの、簡易な体験会です。

サイクルラックの組み立てワークショップの様子

 

作業はものの1,2分。特別な工具を使うわけでもなく意外なほどシンプルな組み立て作業に、みなさん自分ごととして関心を寄せていました。その甲斐あってか、最後にワークショップ参加者のみなさんにサイクルラックの部品(木材と金具)が1部ずつ提供されると、木材は直径1.7m程度の大きさながら、みなさん快く持ち帰っていただきました。宿泊施設や道の駅など、拠点となり得る施設の軒先に設置していただけるそうです。

 

実は、京丹後市内ではサイクルラックを設置する事業者(施設や店舗)がぽつぽつと現れはじめています。これまでも通過するサイクリストの姿に関心を寄せており、ラックの設置によって立ち寄りの機会を増やしたいと考えているそうです。これからのコースや新しい体験の設計にも追い風と言えるでしょう。こうした機運をもとに地域一丸となって活動を進められるよう、CLLとしても仲間づくりを進めていきます。

 

(文責:白井 洸祐)

ワークショップに参加したみなさんと