WHAT IS CYCLE LIVING LAB.?

一般社団法人サイクル・リビングラボは、自転車の活用を軸に新たな産業・文化を築き、地域の活性化に取り組む団体です。

活動の軸となるのは多様なステークホルダーと協働する「リビングラボ」アプローチ。

行政、企業、生活者の継続的な関係性を構築し、自転車、モビリティ、テクノロジーを軸としたさまざまなプロジェクトによって先進的な事業に取り組み、新たな価値の形成を通じて都市や地域の持続可能な発展を目指します。

人気リゾート地の大問題……春と秋の閑散期をどう解決する? 夕日ヶ浦/久美浜エリア(京丹後市)訪問記

 

私たち一般社団法人サイクル・リビングラボ(CLL)は、現在丹後地方を中心に活動しています。自転車にまつわるさまざまな事業を進める一方で、地元キーパーソンとの対話や地域での課題ヒアリングも行っています。今回は、京丹後市の夕日ヶ浦温泉〜久美浜エリア訪問の様子をご紹介します。北関西屈指の人気観光地として知られるこのエリアにも、長らく続く課題があるようで……(記事内の画像提供:楽夕会)。

訪問してわかった、課題とポテンシャル

浜詰海岸を起点に、天然のロングビーチがおよそ8km続くエリア

 

北関西のリゾート地として知られる、京丹後市北西部の夕日ヶ浦温泉・久美浜エリア。約8kmにわたるロングビーチに、丹後地方随一の客室数を誇る夕日ヶ浦温泉郷をはじめ多数の温泉が点在するうえ、西部には久美浜湾と呼ばれる水辺(潟湖)まで──。夏には海水浴やレジャー、冬場は旬のカニを目当てに観光客がひっきりなしに訪れる、天然の観光コンテンツに恵まれた観光エリアです。

 

わたしたちCLLのメンバーがはじめて当地を訪れたのは、2018年10月後半のこと。訪問先は、地元の旅館経営者やアクティビティ事業者を中心に結成された地域団体「楽夕会」。地元のイベントを企画・実行するなど、現状に甘んじず、地域での新しい取り組みに意欲的な現役世代の事業者のみなさんです。

 

お話を伺ってみると、地域一帯が抱える課題が浮かび上がってきました。それは、季節によって繁忙期と閑散期がガラッと入れ替わること。前述のようにコンテンツが豊富な夏冬に比べ、春と秋のシーズンの来訪者は「からっきし」なんだとか……。

 

実は、問題の春と秋という季節は、いうまでもなく自転車には最高の季節とされています。雪が積もるわけでもなく、真夏のような暑さに苛まれるわけでもない。地域のコンテンツが豊富であればあるほど、地域をめぐる手段として有効利用できる可能性も高まります。

 

では、自転車利用の実態はどうなのか。──結論から言えば、ほぼありませんでした。そもそもクルマが生活の中心。自転車を所有しているお宅のほうがめずらしいほど。観光客もクルマで訪れるのが基本で、たとえばかつて試験的に導入されたレンタサイクルもほとんど利用されないまま、サービス自体が廃止されてしまった……。自転車を利用しようにも目的のないエリアだったというわけです。

夏場はSUPなど海のアクティビティを楽しむ観光客で賑わう

 

温泉郷の名が表すとおり美しい夕日に代表される景観の豊かさ、そして海を中心とするアクティビティ、宿泊・休憩施設の充実ぶり。ポテンシャルが高いエリアであることは間違いありません。そして、地元の方々にしか知られていない地域資源はまだまだ眠っているはず……。素材が明らかになれば、打ち手や訪れる動機づけも明確になります。

 

対話を重ねながら、楽夕会のみなさんからいくつものスポットやルートの可能性が挙がりました。もしかすると、「自転車不毛の地」はかつてのものとなり、自転車が地域の活性化に重要な役割を果たす日が訪れるかもしれません。そんな期待を胸に、次回は地域の方々とCLLで、さらに地域の資源を発掘するワークショップを実施することになりました。

 

(文責:白井 洸祐)